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日本即席食品工業協会創立50周年記念シンポジウム(2014年10月29日)

食の未来を考える〜脳とカラダにおいしい話〜

主催:読売新聞東京本社 後援:一般社団法人 日本即席食品工業協会

日本即席食品工業協会は9月17日、インスタントラーメンをこよなく愛する脳科学者の茂木健一郎さんや女優の紺野美沙子さんらを招き、創立50周年記念シンポジウムを開催。インスタントラーメンの魅力や、国内外での食べられ方の違い、これからの世界で果たす役割などについて意見が交わされた。

ごあいさつ

日本即席食品工業協会 理事長 安藤 宏基氏

55億食日本を代表する世界食

インスタントラーメンが誕生したのは1958年ですが、56年間で急成長を遂げました。世界中で年間1056億食ものインスタントラーメンが消費され、日本では約55億食が食べられています。
当協会の前身である日本ラーメン工業協会は、1964年9月17日に発足し、7年後に日本即席食品工業協会と名称を変更し、今に至ります。発足当初の加盟会員は360社。創立50周年にあたる現在は58社が加盟しています。ラーメンメーカーは世界に数あれど、日本ほどレベルが高く、活気がある国はないでしょう。これも協会の中で各社が競争しつつも、それぞれの特長を生かしたユニークで魅力的な商品開発を行っている成果だと思います。
国民食として皆さまに支持されているインスタントラーメンですが、これからもおいしく、安全で安心な商品を手軽な価格でお届けできるよう、努めてまいります。

基調講演:脳とおいしさ ~心の栄養をつくるもの~

脳科学者/ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー 茂木 健一郎氏

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専門は脳科学、認知科学。

私はイギリス留学時代、食事が口に合わなくてインスタントラーメンに何度も救われました。研究室でもお腹が空くと、みんなでインスタントラーメンを作ります。「今日はどんな具にしようか」と相談しながら野菜を刻んだり、みんなでテーブルを囲んで食べるとよりおいしく感じます。その理由を脳科学の視点で解説しましょう。

おいしいものを食べると、悩みがフッと消えたという経験はありませんか?人間はおいしいものを食べると、中脳から前頭葉へ神経伝達物質“ドーパミン”が放出され、脳内の様々な回路に活性化のシグナルが出ます。ドーパミンは意欲や新しいことに挑戦したい気持ちなどに大変重要な働きをするんですね。ですから、おいしいインスタントラーメンを食べると、体が温まってホッとすると同時にドーパミンが出て、「よっしゃ、またがんばろう」という気持ちに切り替わる。これが脳の活性化のメカニズムです。

もうひとつ大切なものは、他人との関係です。家族や友人と一緒に食事すると、よりおいしく感じて、笑顔になります。これは脳の前頭葉にある“ミラーニューロン”という神経細胞の働きによるものです。他人の行動を見て、まるで自身が同じ行動をしているかのように“鏡”のような反応をすることから名付けられました。自分も相手も「おいしいね」と顔を見合わせながら食べると、ミラーニューロンのおかげでおいしさが何倍にも増えるという素晴らしい働きが脳にはあるんです。人間の脳とは不思議なものです。

食事は必要な栄養が摂取できればいいのではありません。楽しく笑顔で味わうことが心の栄養に、生きる原動力になります。食べる喜びを大切にしていきたいですね。

トークセッション:食の未来を考える

女優 紺野 美沙子氏

女優としてテレビ・映画・舞台で活躍する一方、1998年には国連開発計画親善大使に任命され、国際協力の分野でも活動中。2010年秋から「紺野美沙子の朗読座」を主宰。

安藤

麺の原型は紀元前4世紀くらいに中国で生まれたという説があります。その後、日本や東南アジアに渡り、各地で進化しました。インスタントラーメンの歴史は1958年に私の父である安藤百福が発明したことに始まります。当時、すでに大人気だったラーメンですが、麺にお湯をかけるだけで食べられないかと考えたんです。ある時、母が天ぷらを揚げる姿から、麺をフライにするアイデアが生まれ、お湯をかけるだけで食べられる「チキンラーメン」が誕生しました。

宮智

今では世界中でインスタントラーメンが食べられていますね。

安藤

はい、2013年の世界の年間総消費量は1056億食になりました。

宮智

国によって食べ方や味に違いはありますか。

2013年インスタントラーメン世界市場総需要
1位 中国・香港 462.2
2位 インドネシア 149
3位 日本 55.2
4位 ベトナム 52
5位 インド 49.8
6位 アメリカ 43.5
7位 韓国 36.3
8位 タイ 30.2
9位 フィリピン 27.2
10位 ブラジル 24.8
11位 ロシア 21.2
12位 ナイジェリア 14.4
13位 マレーシア 13.5
14位 ネパール 10.2
15位 台湾 9.8

単位:億食(袋めん/カップめん)世界ラーメン協会(WINA)調べ

〈モデレーター〉読売新聞東京本社編集局生活部長
宮智 泉氏

日本栄養士会 専務理事
迫 和子氏

安藤

麺文化の中国では、朝食にインスタントラーメンを食べる光景がよく見られます。インドでは手づかみで食べる風習が残っていますから、スープは少なめでスパイスは多めと、国民性に合わせた商品開発を行っています。

宮智

インスタントラーメンを買う時に重視したい点を教えてください。

製品に栄養成分表示やJASマークがあるかチェックしてください。意外に思われるかもしれませんが、インスタントラーメンはカロリーが低いんですよ。

紺野

JASマークについて詳しく教えていただけますか。

安藤

JASマークとは農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)による厳密な検査に合格した製品につけられるマークです。原材料などの品質や容器包装についての規格を満たした証明であるので、商品を選ぶ際の目印にすれば安心です。

「インスタントラーメンは添加物が多そうで不安」との声もありますが、JASマークのついたインスタントラーメンに使用できる食品添加物は、食品衛生法によって安全性が確認されているもののうちJAS規格が認めているものに限定されています。また、ビタミンB1、ビタミンB2、カルシウムなどが、栄養強化のために添加されています。

宮智

今やインスタントラーメンは日本人の生活に欠かせない国民食で、子どもたちも慣れ親しんでいます。協会は子どもの食育にどのように取り組んでいますか。

安藤

小学生によるレシピコンクールを開催しており、毎回素晴らしいレシピに驚かされます。食の基本は子ども時代に形成されますし、簡単に作れるインスタントラーメンか ら料理の楽しさを知ってほしいですね。

私の子どもが初めてひとりでインスタントラーメンを作った時に、栄養バランスがよくなるように冷蔵庫にあった野菜やハムを使って調理したんです。野菜は生煮えでしたが、これを機に調理することに慣れました。簡単においしく作れるインスタントラーメンで、料理できる自信を早い時期から持たせたいですね。

宮智

インスタントラーメンの将来をどうお考えですか。

紺野

東日本大震災を経験して、インスタントラーメンの便利さと備蓄性を再確認しました。子どもの頃は新製品が出ると3姉妹で味比べして楽しんでいましたので、新しい味を期待しています。

茂木

インスタントラーメンは日本人の創意工夫が詰まった製品です。和食のおいしさに気付いた海外の人々がもっと食べるようになるでしょうね。

高齢になるとあっさりした和食が好まれるとされますが、実際は子ども時代に食べ慣れた味が恋しくなります。数年後には、高齢者にとっての懐かしい味にインスタントラーメンが入ると予想しています。アレンジしやすく手軽に作れるインスタントラーメンは、超高齢化社会を支える介護食になるかもしれません。

安藤

おいしいインスタントラーメンを安心して食べていただけるよう、原材料を厳しく検査し、安全性に十分配慮してまいります。今日の話を隠し味にして、インスタントラーメンを楽しんでください。